【5月1日 AFP】イラクの首都バグダッド(Baghdad)で4月30日、同国議会が新閣僚承認をしなかったことに怒った数千人のデモ隊が、同市中心部にあり厳重な警備が敷かれている旧米軍管轄区域「グリーンゾーン(Green Zone)」になだれ込み、議会に乱入する事態になった。

 歓声を挙げながら議会に乱入した人々の多くは、イスラム教シーア派(Shiite)指導者のムクタダ・サドル(Moqtada al-Sadr)師の支持者で、サドル師を称賛するスローガンを叫びつつ、自分たちが(議会の)腐敗を正したと主張していたという。

 バグダッド近郊で30日にシーア派の巡礼者を狙った自爆攻撃で23人が死亡する事件があり、辺りは緊張感に満ちていた。デモ隊がグリーンゾーンになだれ込んだ後は更に厳重な警備強化が行われたという。

 一般の立ち入りが制限されているグリーンゾーンには議会の他にも大統領府や首相府、米国、英国など数か国の大使館が位置している。現場のAFP記者によると、デモ隊はグリーンゾーンに侵入するためコンクリートの壁を倒したり、フェンスをよじ登ったりしたという。

 AFPの記者によると、デモ隊はグリーンゾーン侵入後に議会へ向かい、一部の人々は建物内で暴れたり事務室に乱入したりしたが、他の人々は「平和的に、平和的に」と叫びながら、破壊行為をやめさせようとしていた。現場にいた治安部隊はデモ隊に対処しなかった。

 デモ隊はその後、議会近くに位置する首相府の事務局長室に移動したという。デモ隊がグリーンゾーンに侵入して約6時間後、ハイダル・アバディ(Haider al-Abadi)首相は声明を発表し、バグダッド市内の状況は「治安部隊の制御下にある」と述べ、デモ隊に対し「指定されたデモ開催地」へ戻るよう促した。

 デモ隊に対しては催涙弾が使用されたが、双方が友好的に振る舞ったためそれ以上の暴力に発展することはなかったという。

■イラク議会は大混乱

 現場のAFPカメラマンは、その後夜になるとサドル師を支持する武装組織「サラヤ・アルサラム(Saraya al-Salam)」のメンバーらが議会から去るようデモ隊に指示する姿が見られた。

 デモ隊はそれ以前に、グリーンゾーン出口に続く道路を有刺鉄線で塞ぎ、議員が騒ぎから逃げることを妨げていたという。またデモ隊は、議員が所有すると思われる乗用車数台を攻撃して損傷を与えていた。

 グリーンゾーンにおける騒動は、サドル師がイラク国内のシーア派聖地ナジャフ(Najaf)で記者会見を行い、政治の行き詰まりを非難した後に開始された。サドル師は先月、支持者をグリーンゾーンに送り込むと警告していたが、30日の記者会見では支持者にグリーンゾーンへの侵入を指示してはいなかった。(c)AFP/Ammar Karim