■「夢のようなこと」が起こっているレスター

 イースト・ミッドランズ(East Midlands)の静かな町をホームとする中堅クラブのレスターは、1929年にリーグ戦準優勝を果たしたのがこれまでの最高成績で、定期的にチームの記事を書いてくれるのは、地元紙レスター・マーキュリー(Leicester Mercury)くらいしかなかった。

 ところが今シーズンの奇跡の快進撃を受けて、ニューヨーク・タイムズ(New York Times)やスポーツ・イラストレイテッド(Sports Illustrated)、ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)といった米国の大手メディアさえもが記事として取り上げるまでになっている。

 レスター(Leicester)市のピーター・ソールズビー(Peter Soulsby)市長は今月、英紙デーリー・テレグラフ(Daily Telegraph)に対し、「イングランド(England)の地方都市の話題が、WSJで1面を飾るなんてありえません。何か夢のようなことでも起こらない限りはね」と話している。

 本拠地キング・パワー・スタジアム(King Power Stadium)の記者室も、今では多国籍軍の様相を呈している。まるで、14の国と地域の選手(他チームへ期限付き移籍中の選手は除く)で構成され、人種のるつぼと化しているチームを映しているかのようだ。

 レスターでは、クラウディオ・ラニエリ(Claudio Ranieri)監督がイタリア人で、その雇用主であるキング・パワー(The King Power International Group)はタイの企業。守護神カスパー・シュマイケル(Kasper Schmeichel)はデンマーク人で、主将のウェス・モーガン(Wes Morgan)はジャマイカ代表、FWのレオナルド・ウジョア(Leonardo Ulloa)はアルゼンチン出身だ。

 そして、アルジェリア出身のウインガー、リヤド・マーレズ(Riyad Mahrez)は、24日にはアフリカの選手としては初めて、イングランド・プロサッカー選手協会(PFA)の年間最優秀選手に選出された。

 シーズン中に英スカイ・スポーツ(Sky Sports)がまとめた報告によれば、レスターは、プレミアではワトフォード(Watford FC)に次いで2番目に国籍が多様なクラブだという。

 一方、レスターの快進撃が世界中のメディアの注目を集め、報道陣が大所帯になっていくなかで、シーズン当初から記者室の常連だった一団がいる。日本の記者たちだ。彼らは今季、独ブンデスリーガ1部のマインツ05(Mainz 05)から加入した岡崎の動向を、シーズンを通して追ってきた。

 なかでも一番乗りでやってきたのが、スポーツ報知(Sports Hochi)に寄稿する森昌利(Masatoshi Mori)氏。森氏がレスターの記者会見へ初めて出席したのは昨シーズン、レスターの岡崎への興味が最初に報じられたときのことだった。

 森氏はAFPに対して、「あのときはのんびりしたものでした」と振り返っている。

「来ているのは地元紙の記者に英国放送協会(BBC)、それに私くらい。多分、記者は全部で4、5人だったんじゃないかな。それが今では数百人ですからね!」

(c)AFP/Tom WILLIAMS