【4月27日 AFP】ドイツのフランクワルター・シュタインマイヤー(Frank-Walter Steinmeier)外相は26日、ナチス・ドイツ(Nazi)の党員だった小児愛者の男がチリで運営していたコミューンに関する文書の機密指定を解除すると発表した。このコミューンでは長年虐待が行われていたほか、軍事政権の拷問施設としても使われていたとされ、外相はドイツ政府が虐待防止などの努力を怠ったと認めた。

 文書の機密指定が解除されるのは、チリの首都サンティアゴ(Santiago)から南に約350キロ離れた僻地にあったドイツ移民のコミューン「コロニア・ディグニダ(尊厳のコロニー、Colonia Dignidad)」。元ナチス党員のパウル・シェーファー(Paul Schaefer)が他の移民らと共に設立した。

 コミューンの住民は洗脳され、30年以上にわたって奴隷のような状態に置かれていた。シェーファーは軍事独裁を敷いたアウグスト・ピノチェト(Augusto Pinochet)政権にも協力し、秘密警察に敷地を反体制派の拷問場所として使わせていた。

 シュタインマイヤー外相は「60年代から80年代にかけて、ドイツの外交官はこのコミューンに住むドイツ人を保護するためにほとんど何もしなかった」と認めた。また、ドイツ外務省には「(チリの)軍や独裁者と共謀してシェーファーが引き起こした惨事」に対する責任こそないものの、ドイツ市民に対して「助言や支援」を行う義務はあったとした。

 外相によれば、外務省はコロニア・ディグニダに関する1986~1996年の文書を研究者やメディアに新たに公開する。それ以前の文書は既に公開されている。

 このコミューンでの残虐行為の実態はピノチェト政権の崩壊後に明るみに出た。この事件はエマ・ワトソン(Emma Watson)さんとダニエル・ブリュール(Daniel Bruehl)さん主演で映画化もされている。

 シェーファーは1997年、一連の訴訟を起こされる中でチリから国外へ逃亡。2005年にアルゼンチンで逮捕され、チリで児童に対する性的虐待、武器の不法所持、人権侵害の罪で禁錮20年の有罪判決を受けた後、2010年に同国で服役中に死亡した。(c)AFP