■きっかけは謎のサッカーブーム

 55歳のデリスルさんは、北島の閑静な町トコロア(Tokoroa)で生まれた。オールブラックス(ラグビーニュージーランド代表)のリチャード・カフイ(Richard Kahui)やケビン・メアラム(Keven Mealamu)といった、ラグビーのスターを輩出した町だ。

 デリスルさんはレスターファンになった理由について、「トコロアは強烈なラグビーの町なんですが、私の学生時代、どういうわけかサッカーがはやったんです。今考えても、わけの分からない現象でした」と話した。

「それで1974年のある日、応援するチームを選ばなくてはいけないことになって、ちょうど白黒テレビでレスター対リバプールの試合をやっていたので、レスターを選びました。レスターの方が、名前がかっこいいと思ってね」

 デリスルさんによれば、当時サッカーの試合がテレビで放送されるのはまれで、英国から船便で送られてきた3か月遅れの「シュート(Shoot)」誌を手に入れるのがやっとだったという。

「今では世界は狭くなりました。オンラインのコミュニティーに参加すれば、他のレスターファンと交流できる。早起きすれば、iPad(アイパッド)で試合のストリーミング配信を見られますし、ファンのフォーラムに飛び込んでも良い。仲間の輪に入れた感じがします」

 万が一プレミア制覇を逃したとしても、レスターはすでに来季の欧州チャンピオンズリーグ(UEFA Champions League 2016-17)出場を決めている。つまり、対FCバルセロナ(FC Barcelona)、対パリ・サンジェルマン(Paris Saint-GermainPSG)といった夢のカードが実現するかもしれない。

 それでも、落胆を数十年にわたって味わう中で培われたデリスルさんの諦観は、その程度のことでは揺らがないようだ。

「長年のファンならこう考えるはずです。来季は平常運転に逆戻り、きっと残留争いをしているよ、とね。それがレスターファンの心理ってものです。来年も優勝争いができるとは、ちょっと思えません」

(c)AFP/Neil SANDS