【4月20日 AFP】内戦が続くシリアの北西部で19日、2か所の市場が政府軍によるものとみられる空爆を受け、市民少なくとも44人が死亡した。和平協議のためにスイス・ジュネーブ(Geneva)入りしている反体制派の代表者らは、このような攻撃が相次いでいることを受け、協議から離脱すると表明した。

 在英の非政府組織(NGO)「シリア人権監視団(Syrian Observatory for Human Rights)」によると、2月に停戦が発効して以来最悪規模となった今回の攻撃では、イドリブ(Idlib)県のマーラトヌマン(Maaret al-Numan)市にある市場と、その近郊にある町カフランベル(Kafranbel)の魚市場が被害を受けた。いずれも政府軍による空爆とみられ、それぞれ少なくとも37人と7人の市民が死亡したという。

 イドリブ県は、国際テロ組織アルカイダ(Al-Qaeda)系武装組織「アルヌスラ戦線(Al-Nusra Front)」が掌握している。アルヌスラ戦線はイスラム過激派組織「イスラム国(IS)」同様、停戦の適用対象からは除外されており、政府軍は同組織の支配域に対する攻撃は継続している。

 シリア反体制主流派の最大組織「高等交渉委員会(HNC)」は、マーラトヌマンでの空爆は「大虐殺」であり、明らかな停戦違反だと非難した。

 HNCは18日、シリア国内で戦闘が激化し人道支援が阻害されていることに抗議し、和平交渉への正式な参加を保留すると発表していた。HNCの報道官は、今回の空爆はこの決断に対する「(バッシャール・)アサド(Bashar al-Assad)大統領による報復」だったという見方を示している。

 シリアの5年に及ぶ内戦を終結させるために長く続けられてきた一連の和平交渉における最新の協議は、停戦が希望をもたらしているにもかかわらず、今週もまだ始まっていない。

 米露が仲介したこの部分停戦により、シリア全土で暴力行為が激減したものの、最近特に同国第2の都市アレッポ(Aleppo)の周辺で戦闘が急増しており、和平協議の完全決裂を危惧する声も上がっている。

 HNCの調整担当者リヤド・ヒジャブ(Riyad Hijab)氏は19日、「シリア人たちが日々、包囲作戦や飢餓、空爆、毒ガスやたる爆弾で死亡している状況で、(和平)交渉に参加することは、道徳的にも人道的にも適切ではない」と述べ、自身を含むHNCの代表団が22日までにジュネーブを去る意向であることを明らかにした。

 ただ、協議を仲介する国連(UN)は、協議はまだ頓挫していないと強調。スタファン・デミストゥラ(Staffan de Mistura)特使は、国連の仲介者を通じた間接協議が今週いっぱい続けられる見込みだと述べている。(c)AFP/Rouba El Husseini with Layal Abou Rahal in Geneva