■西アフリカのライオン、絶滅の危機

 国際自然保護連合(IUCN)によると、野生ライオンの個体数は世界で約2万頭。西アフリカでは約400頭、うちナイジェリアには約35頭しかいない。米魚類野生生物局(FWS)は昨年12月、西アフリカのライオンを絶滅危惧種に指定した。

 ライオンの生息地として有名なタンザニアや南アフリカなどの保護区や国立公園は、1平方キロメートル当たり約500ドル(約5万4000円)の予算で運営されている。これに対し、ヤンカリをはじめとする西アフリカでは大半の保護区の運営予算は1平方キロメートル当たり36ドル(約4000円)にすぎない。

 武器を手にした密猟者らが潜んでいるケースもあり流血を伴う小競り合いは珍しくない。調査活動中、キキ氏は常時武装レンジャー6人の護衛を受けている。「われわれが威嚇射撃したら、やつらは逃げるのではなくて撃ち返してくるんだ」とキキ氏は笑う。そして深刻な顔つきになり「以前はブッシュ(低木地帯)でキャンプをするのが好きだったが、もうそれは危険すぎると思っている」と話した。

 大規模かつ迅速にライオンの保護活動を行わなければ、キキ氏の調査はナイジェリア最後のライオンの記録を残すだけで終わってしまいかねない。

「ライオンと同じ地面に立っているとライオンの強さを感じ、自分の胸が高鳴るのが分かる。彼らこそジャングルの王者だと実感できるんだ」とキキ氏は言う。「だがヤンカリではそうはいかない。ここでライオンが見られるのは写真の中だけだ」(c)AFP/Stephanie FINDLAY