【4月14日 AFP】シリア中部の砂漠の中にあるカトリック修道院の壁には、イスラム過激派組織「イスラム国(IS)」が残していった警告の言葉が書かれていた──「カリフのライオンたちはお前らをむさぼり食うためにここに来た」

 シリア政府軍は今月、ISから中部ホムス(Homs)県の要衝カルヤタイン(Al-Qaryatain)を奪還した。しかし、かつては宗教的寛容の象徴だったこの町への破壊行為は、もはや回復不能なほど大きなものだった。

 この町にあるカトリック教会の聖エリアン(Mar Elian)修道院もがれきの山と化した。ISは2015年8月、爆発物とブルドーザーを使って5世紀に建築されたこの修道院を破壊した。英国を拠点とする非政府組織(NGO)「シリア人権監視団(Syrian Observatory for Human Rights)」によると、ISは「神以外の崇拝に使われている」との名目で、イスラム教以外の宗教的な建造物を各地で破壊しているとされる。

 現場には破壊された大理石の石棺が残されていた。そのふたの下に横たわっていたのは、信仰の放棄を拒みローマ人に殺されたホムス出身の聖エリアンの遺骨だった。

 修道院の司祭ジャック・モラウド(Jacques Mourad)神父も、イスラム教に改宗しないと殺すと脅迫され、15年10月に何とかISの魔の手を逃れてきたうちの一人だ。「私は悲しみでいっぱいだ。このようなことが起きているなかでは、沈黙が最も正しい答えだと思う。私は沈黙でいることを選ぶ」とAFPの取材に語った。

 2006年9月9日にキリスト教とイスラム教の関係者らによって改装された教会の入り口や壁は、ISに火をはなたれ黒く焼け焦げていた。モラウド神父によると、カルヤタイン中部にあるほかの教会2か所は、町がISに制圧された最初の週に燃やされたという。