■レフェリーの判断は「常軌を逸している」

 ワトソン氏の事例によって、リングサイドにおける医療体制は劇的な改善を遂げた。

 25年前にワトソン氏の手術でメスを握った神経外科医は、今回の試合では、医療チームのサポートが万全であったとする一方で、レフェリーがもっと早く試合を止めなかったことに対しては、「常軌を逸している」と話している。

 この医師は、デーリー・テレグラフ紙に対して、「医療処置は慎重かつ正確に行われていました。ブラックウェル選手は低酸素症(脳の酸素欠乏)を起こしておらず、人工的な昏睡状態に置かれたのです」と説明した。

「しかし、試合を止めるタイミングは適切ではありませんでした。第7ラウンドか第8ラウンドあたりには、試合が一方的な展開だったのは明らかで、その時に止めておくべきでした。患者は何度もアッパーカットを食らい、相当なダメージを受けていました」

「あのまま試合を続けるなんて、常軌を逸脱しています。すでに勝者は決まっていたのですから」

 一方、英国ボクシング管理委員会(BBBofC)のロバート・スミス(Robert Smith)書記長は、英国放送協会(BBC)に対して、試合でのレフェリーの対応には「満足している」とコメントしている。

「レフェリーのビクター・ローリン氏と、(ブラックウェルのコーチを務める)ゲイリー・ロケット(Gary Lockett)氏と話した。あの夜の彼らの判断に満足している。あれがスポーツというものだ。ニックの回復を祈っている」

(c)AFP/Julian GUYER