【3月25日 AFP】2日前、ベルギー史上最悪のテロ事件を生き延びたロジャー・ラマザニさんは、ブリュッセル国際空港(Brussels Airport)からようやく荷物を持ち出せた。

 22日、出発ロビーで2回の爆発が起きたとき、ラマザニさんは同じターミナルビルの中でコンゴ(旧ザイール)のキンシャサ(Kinshasa)行きの便の搭乗券を握っていた。11人が死亡した恐怖の現場へ事件後、初めて戻ったラマザニさんの記憶では、煙とパニックの中、突然、皆が床へ横たわった。だが1人の女性が、開いているドアの外へと人々をせきたてた。

 ブリュッセル郊外に住むラマザニさんら、爆発事件の渦中に居合わせた何千人もの空港利用者のうち何十人かは24日になって、リュックサックやスーツケース、ベビーカーといった荷物を取りに空港を再び訪れた。

 冷たく広々とした格納庫には5000個以上の荷物がきちんと並び、持ち主を待っている。24日に荷物を取り戻せた人々はそれでも幸運だ。彼らの荷物は爆発が起きたとき、旅客機の格納庫にあった。一方、事件当時にターミナルビルにあった荷物はしばらくそのままだ。まだ捜査が進行中で、一般旅客や空港スタッフは立ち入りできないためだ。

 ドイツ人のミヒャエル・マツィリスさん(65)も荷物を取りに来ていた。事件当時は到着便の機内の窓から外を見ていた。ターミナルから吐き出される黒煙を見て、恐怖が走ったと言う。「われわれが飛行機から降りてロビーへ入ると…とにかく全員が走っていて、何が起きたのか分からなかった」

 バッグを両手に持ったリュック・ブーネンさん(52)が夫婦で乗っていた便は事件当時、滑走路に止まったままで、小一時間したころにニュースを知った。「操縦士から説明があった。『爆発があった』と。ショックだった」

 ブリュッセル首都圏に住むブーネンさんは、最悪の場面を目撃しなかったのは幸いだったと言い、自分は死と隣り合わせの体験からどうにか立ち直ったが、妻はまだ立ち直れずにいると語った。「妻は眠れていない。とにかく泣いている」(c)AFP/Joshua MELVIN