■遺伝子を除去してその重要性を知る

 ベンター氏は電話会見で「生命に関する基本的な疑問に答えを出す唯一の方法は、最小限のゲノムを得ることだと考えられる」と説明した。「おそらく、これを行うための唯一の方法はゲノムの合成を試みることだろう」

 研究チームは、自律的に増殖する既知の生物の中で最小のゲノムを持つ細菌マイコプラズマ(Mycoplasma)に着目した。

 今回の研究の重要な発見の一つは、当初は「必須ではない」と分類されていた一部の遺伝子が実際には必須だと分かったことだ。

 「飛行機について何も知らない人が(米ボーイング(Boeing)の)777型機を調べるとする。部品を取り外すことでその機能を突き止めようとして右の翼からエンジンを外したとしよう。それでも離陸や着陸は可能だ」とベンター氏は解説する。

「そのため、それは不必要な部品だと判断されるかもしれない。それが必要不可欠な部品であることは、2個目のエンジンを取り外して初めて分かるのだ」「不可欠ではないと思われた部分を取り除いて初めて、実は不可欠な要素だったことが分かる。このようなプロセスが何度も繰り返された」(ベンター氏)

 つまり、最小限のゲノムには、このような一対の遺伝子のうちの一方を含める必要があった。今回作られたゲノムには、ゲノムの遺伝情報の解読と発現、および世代間での遺伝情報の維持に関与する遺伝子がほぼ全て含まれている。

 MITのボイト氏は「これは、ゲノムが完全に解明された生きた細胞の作製に向けた重要なステップだ」と話している。(c)AFP/Jean-Louis SANTINI