■「被害者は私だけじゃない」

「被害者は私だけじゃない。他にもレイプされた女性や少女たちがいる。私の知っている人たちだ。彼女たちは名前を明かさず、沈黙している」。ズフラさんは18日のインタビューでこう語った。

 フランス東部ナンシー(Nancy)に住んでいる父親に励まされ、ズフラさんはAFPのインタビューに応じた。ズフラさんの父親は、強権政治を敷いてきたイドリス・デビ(Idriss Deby Itno)大統領に対抗し、4月の大統領選への出馬を予定している。「父には『待ちなさい、この問題は家族だけで解決すべきだ』と言われると思った。でも、父はためらわず、『やりなさい、告訴しなさい』と言った。最初、私は黙っていた。でも、みんなが私のことを支援してくれるのを見て、自分に『なぜ声をあげないの?闘わないの?』って言い聞かせた」

 チャドで警察に行ったが「最初は何も動いてくれなかった」という。「捜査官たちは、政府高官の息子たちに対するレイプの訴えはタブーだと思っている。何度も何度も話したけど、しまいには警察に脅された」。強姦容疑がかけられている5人のうち3人は、軍の将軍たちの息子だった。また共犯容疑の4人の中には、ムーサ・ファキ・マハマト(Moussa Faki Mahamat)外相の息子がいた。

 ズフラさんのこうした行動を知り逆上した容疑者らは、襲撃の様子を撮影した動画をインターネット上に投稿。しかし、この投稿が思わぬ結果を生んだ。裸で泣き叫ぶ少女の映像が、チャド全土に衝撃と反感を巻き起こしたのだ。

 反対派に活動する余地をほとんど与えないほど厳重にデビ政権が警備体制を強化する中、2月15日には何百人もの生徒らが首都でデモを行った。機動隊に解散させられる中で、17歳のアバシュ・ハッサン・ウスマン(Abbachou Hassan Ousmane)さんが射殺された。

 それから数日間、デモは全土へ広がった。さらに負傷者が出て、少なくとも17人が逮捕されたが、抗議への連帯は海外のチャド移民らにも広がり、英ロンドン(London)や米ワシントン(Washington D.C.)でもデモが行われた。「本当に励まされた」とズフラさんは言う。