■「ジェンダーレス」の未来

 このようにジャパニーズ・ファッションが旧習を覆そうとしている一方で、保守的な日本に根付いた男女の性差構造は男性がスカートをはいたくらいでは揺らがないというのが、識者らの考えだ。

 東京を拠点に活躍するスタイルブロガーでテレビ司会者のミーシャ・ジャネット(Misha Janette)氏は、「ジェンダーレスというトレンドはファッションにおける一つのブームであり、必ずしも性差の捉え方や社会構造に関わる問題ではない…私はこのブームで、女性側に何らかの影響が生まれるとは考えていない。女性に力を与えるものではないからだ」と分析している。

 日本では性差別的な法律の撤廃を目指す活動が長く続けられているが、労働力市場や政界における女性の参加率は先進国の中でも最低レベルにとどまっている。

 それでも「ジェンダーレス」ファッションの提唱者らは、米国の五輪金メダリストでトランスジェンダー(性別越境者)であることを公表し、ブルース(Bruce Jenner)から改名したケイトリン・ジェンナー(Caitlyn Jenner)をはじめとするLGBT(レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー)のアイコンらが脚光を浴びていることを理由に、どこか楽観的だ。

 14日に開幕した「メルセデス・ベンツ ファッション・ウィーク 東京(Mercedes-Benz Fashion Week TOKYO)」のオープニングを飾ったデザイナー、三上司(Tsukasa Mikami)のショーでは、シルクスクリーンで花柄を施した服にコンバットブーツを合わせた男女のモデルが登場した。