【3月9日 AFP】大きな歯を持つ、イルカに似た爬虫類のイクチオサウルス(魚竜)は、有史以前に発生した地球温暖化が原因で絶滅に追い込まれたとの研究結果が8日、発表された。最後の恐竜がいなくなる数千万年前には、すでに地球の海から姿を消していたという。

「海の竜」と呼ばれることもあるイクチオサウルスは、1億5700万年間にわたって海の捕食者として頂点に君臨した。しかし目覚ましい繁栄を遂げた後に突如として姿を消しており、古生物学者らはこの現象に長年、頭を悩ませてきた。

 海生爬虫類として繁栄した種族イクチオサウルスは、分布を広範囲に拡大し、遺伝的に多様な亜種を多数発生させた。これは通常、その後も種として成功を収めることを予兆させるものだ。そのため、これまでには、ライバルの爬虫類や魚類との食物や生息環境をめぐる争いに敗れたののではとする説や、イクチオサウルスの餌そのものが絶滅したとする説などが提唱されていた。

 だが、欧州の研究チームは8日、イクチオサウルスの化石史と気候変動の地質記録を比較することによって、この謎を解明したと発表した。

 研究チームによると、イクチオサウルスは2つの局面を経て段階的に絶滅に至ったという。そして、最終的には、今から約1億年前の後期白亜紀の初め、体の進化が地球の変化に追いつくことができなくなり姿を消したとしている。

 今回の研究に参加した英オックスフォード大学(University of Oxford)の研究者らは、声明で「その当時、地球の両極には基本的に氷が存在せず、海水位は現在よりはるかに高かった」と説明している。

 気温と海水面の上昇は、食物の安定供給、生息地移動の経路、ライバルとなる捕食動物の個体数、繁殖営巣を行う場所などに影響を及ぼした可能性が高いと研究チームは指摘する。「これらの影響が相まって発生し、イクチオサウルスを絶滅に追いやったのだろう」

 陸生恐竜の最後の生き残りは約6500万年前に姿を消し、その後に哺乳類が台頭した。(c)AFP