■メディアの報道がきっかけに

 北部パンジャブ(Punjab)州の大きな村、フセインカーンワラ(Hussain Khan Wala)村の曲がりくねった狭い道を、イルファン君は足を引きずりながら力なく歩いている。被害に遭ったほかの子どもたち同様に、彼も汚名を着せられ、暴行されてから5年間、何のサポートも得ていない。

「友人たちに凝視されると、すごく嫌な気分になる」と、イルファン君は小さな声で言う。「級友や先生たちからさげすんだ目で見られるから、学校に行かなくなった」

 事件は昨年7月にようやく全国ニュースで報じられたが、地元警察は何か月間も見て見ぬ振りをしていた。「怠慢というより黙認だ」と、国家人権委員会(National Commission for Human Rights)は報告書で指摘した。

 加害者の何人かは、地元で影響力をもつ家の出だった。被害者家族と警察の間で衝突が何度も起き、数十人が負傷したことを受けて、政治家たちが介入、逮捕を要求した。

 その後、被害者やその家族らは何度もメディアに登場。性的暴行を受けた子供の数は280人に上るとする地元の声もあるが、この数字は、この事件を利用して政治的もしくは商業的な利益を得るために誇張されたものだとみられている。

 当局は20人の少年がレイプされたとして立件したが、パキスタンの法律で性犯罪と認められたのは2件だけだった。同国の刑法は、挿入をともなわない性的虐待や児童ポルノを禁じていない。

「このスキャンダルは、性的虐待と戦うための、子どもたちを守るための制度がないことを示している」と、法改正を訴える地元NGO「グループ・デベロップメント・パキスタン(Group Development Pakistan)」のバレリー・カーン(Valerie Khan)代表は言う。

 子どもへの性的虐待を犯罪とする法案が現在、同国の議会で審議されている。(c)AFP/Caroline Nelly PERROT