■難しい挑戦

 米国ファッション協議会(CFDA)は、コンサルタントを雇ってこの新システムに関する助言を求めている。コンサルタントの意見がまとまるのは来月だが、従来のサイクルは時間がかかり、複雑だとの指摘がすでに上がっている。

 市場調査会社NPDグループ(NPD Group)の小売業界アナリスト、マーシャル・コーエン(Marshal Cohen)氏は、「人々が見たものを即クリックして買える社会になりつつある」とみている。「市場の回転を高速化させ、消費者の利便性が向上する。まさにファストファッションだ」

 しかしコーエン氏は、新システムの導入は容易ではないと話す。「難しい挑戦になるだろう…デザイナーの中には、発表の1年から1年半前、早ければ2年前にデザインしている人もいる。そこからパターン起こしまで8か月かかる。それをどうやってスピードアップしていくか、学ばなければならなくなる」

 そのタイムラグの大きさゆえに、大手ハイストリートブランドがハイエンドデザイナーらをしのぐという事態も生じ得る。コーエン氏によると、例えばスウェーデンの大手ファッションブランド「H&M」なら、ランウェイに登場した服をコピーして店頭に並べるまでを、2か月でこなしてしまうという。

「加速化は進む一方だと考えている」と語るのは、デザイナーのレベッカ・ミンコフ。これまでのペースが「楽で無難、快適」だったのは確かだが、「われわれはリスクに挑んでいきたいと思っている。リスクを冒すことを恐れてはいない」のだという。

 これが売り上げにどう影響するか、結果が出るのはまだ先になるが、レベッカの兄で同ブランドの最高経営責任者(CEO)を務めるウリ・ミンコフ(Uri Minkoff)氏は、先月の卸売段階でのセールスが1割増になったと明かす。

 卸売りの提携先は「皆興奮している。店舗の方もすぐに、こうしたメディアの注目や盛り上がりに連動するはずだ」と期待を示した。(c)AFP/Thomas URBAIN