■便乗の南欧、移民危機のギリシャ

「欧米の旅行客の考えでは、中東といえば政情不安という図式が成り立っているに違いない」と、市場調査会社ユーロモニター(Euromonitor)のアナリストはいう。その結果「気候が似ていて、低価格でさらには安全な行き先として、ギリシャやポルトガル、スペインが、こうした状況の恩恵を大きく受けるのではないかと予測している」と語った。だがそうした国々では、急激な需要増により価格の上昇も起きるという。

 また、かつて旅行業者にとっても賢明な行き先だったギリシャの島々は移民危機に見舞われ、移民が大量に漂着する状況に、旅行者は戸惑いおびえている。ユーロモニターによれば、ギリシャの島の中でも特にコス(Kos)島への観光は、昨年1月から8月にかけて17万8000件のキャンセルがあったという。

■「旅行渋滞」キューバ、ジカ熱流行の中南米

 一方、14年末以降の米国との関係改善によって観光業が上向いているのが、キューバだ。しかし、首都ハバナ(Havana)の港には毎日巨大なクルーズ船が到着し、旅行客を消化しきれない「渋滞」状態と苦戦している。

 フランスのキューバ専門旅行代理店、クーバ・オートルモン(Cuba Autrement)のステファン・フェルックス(Stephane Ferrux)氏は「今週は250人の団体が到着する。なのに、3月に予約し、支払いも済ませてあった80室が使えないという。全部オーバーブッキングのせいだ」と困惑していた。キューバへの旅行者数は昨年17%増だったにもかかわらず「国の受け入れ態勢が整っていない。1年間のうちに50%も値上がりした料金を正当化できるだけのクオリティーがない。皆、分け前を欲しがっている」と同氏は語った。

 大地震から6年が経過したハイチの自然のままのビーチや、コロンビア、ペルー、メキシコ、アルゼンチンなどへも観光客は大挙して押し寄せているが、専門家らは、アフリカ・サハラ砂漠以南でのエボラウイルスやカリブ海沿岸でのチクングニアウイルスの流行、または韓国で、中東呼吸器症候群(MERS)を引き起こすコロナウイルスが流行したことを挙げ、南米各地は今後、ジカウイルスの流行による影響を受ける可能性があると話している。(c)AFP/Katia DOLMADJIAN