■経験に基づく一般化

 しかし、カラスが餌を隠すために特別に注意を払ったのは、のぞき穴が開いている時だけだった。のぞき穴が閉じたままになっていると、録音したカラスの音が聞こえていても、カラスは何らかの方法で、見張られている可能性はないとの判断を下した。

 主にチンパンジーを用いたこれまでの研究では、人間以外の動物でも、「他者が何を見ているか」を理解できることが判明していた。

 だが、動物がそうするのは、他の個体の頭部や目の動きを監視することで得られる、科学者らが「視線手がかり」と呼ぶ情報を頼りにしていると考えられてきた。

「人間以外の動物が、行動に関する手がかりに頼らずに、『見る』という概念を持つことができるかどうかという問題は、依然として未解決のままだった」と論文は指摘している。

 だがカラスは、このような手がかりがなくても、自分が監視されているかもしれないことを理解し、それに応じて行動を変化させることが分かった。

「カラスは、自身の経験に基づく一般化を行っており、単に他の個体の行動による手掛かりを読み取って反応しているだけではないことを、この結果は強く示唆している」とBugnyar教授は説明した。

 餌を隠す習性を持つ鳥のカラスは、監視されていると思ったら急いで餌を隠し、その後に監視の目がなくなるとすぐに、餌をもっと良い場所に隠すために戻ってくることを、研究チームは明らかにした。

 カラスの幼鳥は、協力関係を結んだり壊したりする「社会的な柔軟性」を示すことが知られている。成鳥になると、通常は縄張りを守り、一対一のつがい関係を築いて暮らす。(c)AFP/Solange UWIMANA