【2月2日 AFP】ドーピング違反を犯したとして出場停止を言い渡されたものの、処分が後に覆った元自転車選手のロベルト・エラス(Roberto Heras)氏について、スペインの全国管区裁判所は国に対し、エラス氏が処分期間中にレースを続けられていれば獲得していたであろう約72万ユーロ(約9500万円)を賠償するよう命じた。AFPが入手した裁判所の判決文によって明らかになった。

 マドリード(Madrid)にある全国管区裁判所は、国の過失を認め、エラス氏が2年間の出場停止期間中に獲得できたであろう72万4904ユーロ86セント(約9545万円)を支払わなければならないという裁定を下した。不服申し立ての期間は8日までとなっている。

 2005年のブエルタ・ア・エスパーニャ(Vuelta a Espana)で総合優勝したエラス氏だが、閉幕後、同氏の体内からエリスロポエチン(EPO)が検出されていたことが明らかになった。エラス氏はこの結果、タイトルを剥奪されたとともに、スペイン自転車競技連盟(RFEC)から2年間の出場停止処分を科され、事実上の引退状態に追い込まれた。

 しかし2012年、スペインの裁判所は、当時の尿検査の手続きに不自然な点があったというエラス氏の訴えを認め、出場停止処分が覆された。

 エラス氏は現役時代、2000年のブエルタで初の総合優勝を果たすと、2003年から総合2連覇を達成した。

 一方では、禁止薬物への対応が甘いとされているスペインの司法当局が、再びドーピング問題を厳しく取り締まらなかったと批判される材料を作ったともいえる。

 2013年には、「オペラシオン・プエルト(Operacion Puerto)」と呼ばれる薬物捜査で、自転車選手の血液ドーピングを手助けしていたことが明らかになり、起訴されたスペイン人医師エウフェミアーノ・フエンテス(Eufemiano Fuentes)氏の裁判で、押収した200個以上の血液バッグを破棄せよという判決が下され、多くの反ドーピング機関から批判の声があがった。

 証拠品になるはずの血液バッグを破棄するべきだという裁定に対しては、不服申し立てが行われたが、現在もスペインの裁判所で手続き中となっている。また、この対応のまずさが、2020年の五輪招致における失敗の大きな要因になったとみられている。(c)AFP