【1月29日 AFP】ハンガリーで2010年にアルミニウム工場の廃液貯水池が決壊し、大量の有毒汚泥が流出して地元住民ら10人が死亡、150人がやけどを負った事故の責任を問う裁判で、同国西部べスプレーム(Veszprem)の裁判所は28日、工場の経営者ら被告15人全員に無罪を言い渡した。被害者らは怒りの声を上げている。

 この事故は、ハンガリー西部アイカ(Ajka)で2010年10月4日、MALハンガリーアルミニウム製造販売会社(MAL)のアルミニウム精錬工場の廃液貯水池が1週間続いた大雨の後に決壊し、赤い有毒汚泥が流出したもの。110万立方メートルもの廃液は洪水と化して近隣の3つの村を押し流し、家々は高さ2メートルの汚泥に埋まった。

 最終的に汚泥は40平方キロの範囲に広がり、ドナウ(Danube)川にまで達した。貯水池に近い河川の生物は、ほぼ完全に死滅。政府は非常事態を宣言し、約8000人が避難するハンガリー史上最悪の化学事故となった。現在も、数百ヘクタールの土地が立ち入り禁止となっている。

 工場の責任者だったゾルターン・バコニ(Zoltan Bakonyi)被告とMAL幹部ら社員15人が業務上過失、廃棄物管理違反、環境破壊などの罪で起訴され、検察側は全員に禁錮刑を求刑していた。

 しかし28日、裁判所は事故原因は「土壌の安定性が失われたため」と判断。15人に刑事責任は問えないとして、全員に無罪の判決を下した。検察側は上訴する方針だ。

 無罪判決は、傍聴席を埋め尽くした事故の被害者や犠牲者遺族らの間に強い怒りを巻き起こした。破壊された家々の写真を掲げた男性が「とんでもない判決だ!断固、抗議する!」と叫び、警備員に法廷の外へ連れ出される一幕もあった。(c)AFP/Peter MURPHY、Geza MOLNAR