【1月22日 AFP】ソ連国家保安委員会(KGB)の元情報員、アレクサンドル・リトビネンコ(Alexander Litvinenko)氏毒殺事件をめぐり、英国の公式調査でウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)大統領が暗殺を承認した可能性が高いと結論付けられたことについて、ロシア政府は21日、「冗談なのかもしれない」と一蹴した。

 ドミトリー・ペスコフ(Dmitry Peskov)大統領報道官は記者団に対し、「これは冗談なのかもしれない」「英国流の洗練されたユーモアがなせることなのだろう。公開公式調査が、特別機関、それも名が明かされていない特別機関の機密情報に基づいて行われ、この薄っぺらいデータに基づき下された結論が、『おそらく』や『可能性が高い』といった言葉がちりばめられた状態で公表された」と批判。このような「疑似調査」は「両国関係のムードにさらに毒を盛る」ことになりかねないと指摘した。

 ロシア政府に対し批判的な態度を示していたリトビネンコ氏は2006年、ロンドン(London)のホテルで放射線物質「ポロニウム210」を緑茶に入れられて毒殺された。今回英国で行われた調査では、元ロシア連邦保安局(FSB)長官のニコライ・パトルシェフ(Nikolai Patrushev)氏とプーチン大統領がこの殺害作戦を「おそらく承認した」と結論した。

 これを受け、デービッド・キャメロン(David Cameron)首相は事件を「国家が支援した行為」と呼び非難したが、英政府は具体的な対応として、駐英ロシア大使を呼んで協議を行ったのみで、一部から求める声が上がっていた対ロシア制裁の発表は見送った。

 今回の調査結果は、すでに緊迫している英露関係に大きな打撃を与える可能性があるが、ペスコフ報道官はその起こりうる悪影響を重大視しない姿勢を示し、英政府がロシア大使を呼んだのは「一般的な外交慣例」の一環だったとの見解を表明。今回の調査結果に関連して英政府から問われれば、どのような質問にも答える方針だと述べた。

 英政府が同事件に関する調査を行うと発表したのは2014年、ウクライナ東部でマレーシア航空(Malaysia Airlines)機がロシア製ミサイルにより撃墜された数日後のことで、ロシアに対する制裁と受け止める見方もあった。調査が実際に始まったのは、昨年1月だった。(c)AFP