■「俺はジェイソン・ボーンみたいだろう」

「俺はジェイソン・ボーンみたいだろうと言いたくて、私はああいうこと(脱走)をしたんだ」と、バーグダール軍曹はボール氏に語った。「私は、映画を見た人が憧れる登場人物のようなすごい人間なんだということを世界に知らしめてやるという、途方もない考えを持っていた」

 タリバン系のハッカニ・ネットワーク(Haqqani Network)に拘束されていたバーグダール軍曹は、アフガニスタンで反政府勢力に拘束された唯一の米兵だ。

 バーグダール軍曹は、光のない地下室のような部屋に閉じ込められていたという。「寝ても覚めても真っ暗だった。目が覚めても自分が何者かさえ分からない感じだった」

 同軍曹によれば、行方をくらませて別の基地に行き、彼が言うところの「所属部隊幹部の体たらく」に注目を集める計画だった。無線通信で言う「DUSTWUN(任務状況 所在不明)」の状況を作り出して軍とCIAを混乱させ、その上で再び姿を現せば米軍上層部も自分の言い分に耳を傾けると考えたのだという。「根性のある行為だったが、ばかだった」

 準備のために、バーグダール軍曹は持っていた本と日記、ノートパソコン、電子書籍リーダーのキンドル(Kindle)を家に送り返し、アフガニスタン人が着る服を購入。賄賂を渡す必要があるときのために米ドルと地元の通貨で合わせて300ドル(約3万6000円)分の現金を引き出した。