【12月4日 AFP】手に入れることも食べることもできないお菓子――。今から118年前にオーストリア・ハンガリー帝国の皇后エリザベート(Empress Elisabeth)のために焼かれたケーキが、イタリア南チロル(South Tyrol)地方の町メラーノ(Merano)にある城で今週から、お披露目されている。

 こげ茶色のケーキは、皇后がかつて休暇中に滞在していたトラウトマンスドルフ城(Castle Trauttmansdorff)で、王冠の宝石のごとくガラスケースに入れられて展示されている。博物館となっている城の常設展示に「甘さ」が加味された。

「シシィ(Sissi)」の愛称で知られたエリザベートは1897年9月、当時オーストリア・ハンガリー帝国領だったメラーノを訪れた際に、宿屋の主人からこのケーキを献上された。以来、ケーキはずっと保存されてきた。

 もっとも城の広報担当者によれば、実際のところは見かけほど「甘く」はないようだ。このケーキは菓子というよりパンに近いもので、このため現在では「木のように硬い」という。

 オーストリア皇帝、フランツ・ヨーゼフ1世(Franz Joseph I)のきさきであるエリザベートは、細身の容姿とダイエットへの執着で知られ、極めて少食だった。このケーキでも口をつけた形跡はわずかなことから、その事実がうかがえる。(c)AFP