■「脱酸素化」のリスク

 仏ルブルジェ(Le Bourget)のCOP21の会場でUNFCCCの協議を進めている国連加盟国は、地球全体の気温上昇幅を産業革命以前の水準から2度未満に抑えるという目標を掲げている。しかし、英気象庁は先月、2015年がこの中間点となる1度を上回るとの見通しを発表したばかりだ。

 気候問題の権威とみられている国連の「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」によると、温室ガス排出の動向が最悪事態のシナリオをたどった場合、地球の気温は今世紀中に4.8度上昇する可能性があるという。

 論文共同執筆者のセルゲイ・ペトロフスキー(Sergei Petrovskii)氏は、AFPの取材に「今回の研究が伝えていることは、地球温暖化の結果として、われわれに近づいている大惨事がもう一つ存在する可能性があること、そしてそれは、これまでに特定された他の全ての結果よりはるかに悪いものである可能性があることだ」と述べている。

 電子メールで取材に応じたペトロフスキー氏は「この大惨事が実際に起きるまでには、危険な状態を知らせる兆候がほぼ皆無かもしれないが、臨界しきい値の6度をひとたび超えると、破滅的状況が急速に展開するだろう」と説明した。研究チームは、温暖化の海洋への影響に関するこれまでの研究では、海面上昇と生物種の消失に重点が置かれていたと指摘する。

 ただ今回の研究は、観測調査結果ではなく、数理モデルに基づくものであるため、海洋大循環といった結果に影響するであろう特定の自然作用が因子として含まれていない。このことは論文執筆者らも認めている。

 それでも、CO2の排出を野放しにすることで、最終的には「脱酸素化」も無視できないリスクとなると研究チームは指摘する。論文には「その危険性は、水没より現実味を帯びているだろう」と記されている。(c)AFP