【11月18日 AFP】フランスの首都パリ(Paris)で13日夜に起き、イスラム過激派組織「イスラム国(IS)」が犯行声明を出した連続襲撃事件では、凶行を阻止できなかった同国の情報機関に再び厳しい視線が向けられている。

 特に大きな懸念とされるのは、事件現場の一つとなったコンサートホール「バタクラン(Bataclan)」を襲撃後、自爆した実行犯の一人、サミ・アミムール(Samy Amimour)容疑者(28)の行動を当局が阻止できなかったことだ。

 仏国籍のアミムール容疑者は、イエメン渡航計画が発覚して2012年に保護観察処分になったにもかかわらず、その1年後にシリア行きを果たし、国際指名手配されていた。それでも当局は、アミムール容疑者がひそかにフランスに帰国し、襲撃事件に加わることを防げなかった。

 情報機関は、コンサートホールで自爆した別の実行犯、オマル・イスマイル・モステファイ(Omar Ismail Mostefai)容疑者(29)についても非難を浴びている。

 モステファイ容疑者は2010年からマークされ、仏当局の要注意人物リスト「Sファイル」に過激派として掲載されていた。また、トルコ政府筋が明らかにしたところによれば、トルコはモステファイ容疑者が脅威となる可能性を昨年12月と今年1月の2度にわたり、フランスに警告したが「フランス側からは何の反応もなかった」という。モステファイ容疑者は13年にトルコに入国しているが、これはシリアへ渡航する途上だった可能性がある。

 仏情報機関、対外治安総局(DGSE)のアラン・シュエ(Alain Chouet)元情報部長は「(欧州の)シェンゲン(Schengen)圏の境界管理に問題がある。大きな問題だ」という。シュエ氏は、アミムール容疑者の帰国が「危険信号の引き金になるべきだった。しかし、彼らはシェンゲン圏を出入りする方法を非常によく分かっており、しかも何度も実践している」と語る。

 また欧州の安全保障にとって、ベルギーも大きな問題となっている。実行犯のうち数人はベルギーの現地警察によって把握されていたにもかかわらず、その動きはほとんど追跡されていなかった。仏警察の幹部筋は16日、「ベルギーから警告がなければ、我々には何もできない」と弁解した。