■現実とかけ離れたイメージ

 ただ、世間の芸妓(芸者)に対するイメージは現実とかけ離れたものであることが多い。菊丸さんの所属する置屋の芸妓たちは、2005年にハリウッドで映画化された米国人作家アーサー・ゴールデン(Arthur Golden)氏の小説『Memoirs of a Geisha(邦題:さゆり)』に非常に大きなショックを受けたという。

 この小説のモデルになったとされる祇園の元芸妓、岩崎究香(Mineko Iwasaki)さんは、京都の芸妓を売春婦のように描写しているとして、原作者のゴールデン氏を相手取って訴訟を起こした。

 菊丸さんは「日本人でさえ、芸者のことを完全には理解していない人もいる。映画は当然、誇張されたもの。映画と実際の芸者で特に異なるのはどこかと聞かれれば、ほとんど全てだと思う」と語った。

 かつては、京都や国内の別の地域では、客と肉体的な関係を持つ芸者もいたという。事実、祇園の芸妓たちは、その華やかな衣装から、芸者を売春婦と誤解する外国人は多いと話す。しかし、菊丸さんは、芸妓に性的な親密さはなく、信頼できる女友達のようなものだと説明した。

 男女平等の観点からは、一見、この界隈のあり方は時代遅れのようにも映る。しかし菊丸さんによると、芸妓の多くは元々、没落士族の娘たちで、それまでに身につけていた上品な立ち振る舞いを生かして芸の世界に入り、家族を支える重要な役割を担っていたのだという。(c)AFP/Alastair HIMMER