【11月6日 AFP】冷戦(Cold War)時代のドイツで東西ベルリン(Berlin)を隔てていた壁が崩壊してから四半世紀――観光客らによる「ベルリンの壁(Berlin Wall)」の損傷行為が急増していることからベルリン市は5日、壁を保護する透明のバリアー(防壁)を設置すると発表した。

 保護対象となるのは、残存する壁の最長部で「イースト・サイド・ギャラリー(East Side Gallery)」として知られる長さ1.3キロメートルの部分。「ベルリンの壁」は1989年11月9日に崩壊。その後、そこに世界からアーティストが集まり、翌年2月から9月まで壁画を描いた。今では毎年300万人近い観光客が訪れる。

 しかし市当局は記者会見で、「ベルリンの壁」訪問記念の損傷行為やスプレー塗料による落書きなど、目に余る行為が急増していると明かした。外国人観光客を中心に、歴史の一部に自らの痕跡を残そうと、もろくなった壁に名前を彫ったり、壁の一部を削って持ち去ってしまったりする人もいるという。さらに、多くの人たちが、そうした破壊行為を記念に「自分撮り(セルフィー)」している。

 こうしたことから、市は常設のバリアー設置に踏み切ったと語った。

 地元公共管理委員の一人は、「バリアーの設置で、壁が歴史的建造物であることが明確になる」と期待を示した。「イースト・サイド・ギャラリー」では25年前に描かれた壁画の修復を先月、終えたばかりだが、その多くがすぐに損傷されたこともバリアー設置の決定につながったという。

 透明の防護バリアーは、見物客との距離を保てるよう壁から1.3メートル離れた場所に設置。高さは80センチで、設置予算は15万ユーロ(約2000万円)。完成は来年初頭の予定で、壁が保護対象の史跡であることを示す標識も備わる。バリアーが完成するまで、補修が終わった壁画は一時的にフェンスで保護される。(c)AFP