【10月30日 AFP】人里離れたミャンマーのある村で、毎日、傾きかけた民家が少しずつ崖に近づいている。中国の数十億ドル規模の需要に応えるため、国のエリート層が所有するブルドーザーが家々の下にある土をえぐり、ひすいの採掘を盛んに行っているのだ。

「あそこは私たちの場所です。彼らは今や私たちが住んでいる場所に侵入してきている」と、ミャンマー北部カチン(Kachin)州のひすい採掘地域にある峡谷をダウ・カリーン(Daw Kareen)さん(44)は指さした。

 家屋は不安定になり、時に倒壊することもあるが、地元での抗議の声は、採掘会社に「牛耳られている」当局からずっと無視されているという。

 辺ぴな場所にあるパーカン(Hpakant)は、ミャンマーの富裕層にとって宝の山だ。彼らは、中国で神秘の宝石として高く評価されるひすいの世界有数の供給源を独占している。

 軍事政権時代にひすいは軍の管理下にあった。ミャンマーが民政移管した2011年以降も、軍の元幹部らが支配する同国政府はひすい産業の秘密主義を貫いている。

 今年11月8日の総選挙の数か月前から地元住民らは、企業がダイナマイトで丘を崩し、地面をいっそう深く掘削して、環境破壊が加速したと語っている。

 孔子(Confucius)が徳の象徴とたたえ、「天国の石」としても知られるひすいは、中国で昔から珍重されてきた。ミャンマーのひすい売上高の公式発表と、中国がミャンマーから輸入したひすいの金額の記録が大きく食い違っていることから、大々的に汚職が行われている恐れもある。昨年は前者が34億ドル(約4100億円)、後者が120億ドル(約1兆4000億円)だった。

 しかし、NGO「グローバル・ウイットネス(Global Witness)」は今月23日に発表した報告書で、ミャンマーの昨年のひすい産出額はそれらをはるかに超える310億ドル(約3兆7000億円)だったとしている。貧困国ミャンマーの国内総生産(GDP)の半分近い額だ。報告書によれば、利益の大半は軍人や元軍事政権関係者のものになり、最高のひすいはパーカン付近の国境から中国に直接密輸されるという。