【10月27日 AFP】ライトを点滅させ、けたたましいサイレンの音を響かせながら、ボランティアのミィン・ヘイン(Myint Hein)さん(54)が運転する救急車は、車でごった返すミャンマー・ヤンゴン(Yangon)市内の道路を、右へ左へと切り返しながら突き進む。長らく続いた軍事政権による支配の間、この国では慢性的な予算不足により、数十年にわたって医療サービスが機能不全に陥ってきた。

 貧弱な公共支出のせいで数多くの行政サービスがおざなりのままとなり、一元的に管理された救急救命システムが依然として存在していない同国で、かつてバスの運転手として働いていたミィン・ヘインさんは、その欠陥を補う一助となるべく奮闘している。

 ヤンゴンとマンダレー(Mandalay)を結ぶ長いハイウエーで頻繁に事故に遭遇したというミィン・ヘインさんは、「救急車両などによる適切な搬送体制が整っていないので、病院に到着する前に死亡してしまう人を何人か見た」と話す。

 ミィン・ヘインさんは、ヤンゴンで今年1月から無料の救急搬送サービスを始めた地元NGO「ノーブルハート(Noble Heart)」でボランティアとして働いている。ヤンゴンでは救急医療が必要な時には家族や友達に援助を仰ぐのが普通だが、ミィン・ヘインさんは義援金によって運用されている救急車両で、機能不全に陥っている救急医療の現状を打開しようと努めている。

 軍政が終わった2011年以降、予算は増えてはいる。しかし世界で4番目の速さで経済発展を遂げているミャンマーは、国内総生産(GDP)に占める医療分野への支出割合では最も低い国の一つとされている。

 世界銀行(World Bank)の最新データによると、医療分野への支出は対GDP比で、2009年の0.2%から2013年の1%超へと増加。その一方で、スウェーデンのシンクタンク「ストックホルム国際平和研究所(Stockholm International Peace Research InstituteSIPRI)」によると、2014年の軍事支出は対GDP比で4.3%を占めた。その結果、ノーブルハートのような小さな組織は、いつも手がいっぱいの状況だという。