【10月28日 AFP】海水温度の上昇の影響から、インド洋(Indian Ocean)に生息するオウサマペンギンの餌探しのための移動がより長距離化している結果、繁殖のための期間にしわ寄せが来ているとの研究結果が27日、発表された。気候変動による「深刻な脅威」に警鐘を鳴らす結果だという。

 英科学誌ネイチャー・コミュニケーションズ(Nature Communications)に掲載された研究論文によると、海面温度が1度上昇すると、オウサマペンギンの餌場は約130キロ南方に移動するという。

 フランスと日本の共同研究チームは、南インド洋の仏領クロゼ諸島(Crozet archipelago)のオウサマペンギンに衛星発信機を取り付け、餌探しのための移動を2010年までの16年間にわたって追跡調査した。

 調査では、南極前線(Antarctic Polar Front)に重点が置かれた。温かい海水と冷たい海水が合流する海域の南極前線は、プランクトンや魚が豊富に得られる餌場となる。

 オウサマペンギンは通常、餌探しのために約300~500キロ移動する。

 だが、エルニーニョ(El Nino)現象などの「異常」気象が原因で気温が高かった年には「オウサマペンギンの移動距離が増加した上、より深く潜水していた」と論文は述べている。例えば1997年の温暖期、子育て中のオウサマペンギンは、餌探しのために平均して通常の約2倍の距離を移動、通常より平均30メートルほど深く潜らなければならなかったという。さらに論文は、「これらの非常に好ましくない環境条件が発生したのと同時期、オウサマペンギンの繁殖個体数は34%減少した」とも指摘している。

 これらのデータから、海洋温暖化がオウサマペンギンに即時の重大な影響を及ぼすことを今回の結果は示していると研究チームは述べている。

「ペンギンのように飛ぶことができず、泳いで餌をとる捕食動物は、その移動速度が低いことから、環境の変化に対して極めて敏感だ。繁殖期間中はその傾向がさらに顕著となると研究チームは論文に記しており、また「将来の気候シナリオは、表層海水の温度上昇を示しており、これによって南極前線の南方への移動も進行すると思われる。この事態は、南極海(Southern Ocean)のペンギンや他の潜水する捕食動物に深刻な脅威をもたらす可能性がある」と警鐘を鳴らした。(c)AFP