■「同じ問題に対する異なる解決策」

 今回の研究は、舌骨(ぜっこつ)として知られる喉頭内の骨の調査に基づくものだ。舌骨が大きいほど、ホエザルがより大きくて太い鳴き声を発する助けになる。

 研究チームは、欧米の博物館から集められたホエザルの舌骨255個の体積を算出するために、3次元(3D)レーザースキャンを使用した。睾丸の大きさのデータは、ホエザル66匹に関する既発表の文献から収集。さらに、ブラジルとドイツの動物園でホエザル21匹の睾丸の大きさをノギスで測定した。

 ナップ教授によると、トレードオフは「同じ問題に対する異なる解決策」を通じて発生したと考えられるという。「大きな舌骨と大きな睾丸の両方を形成するのは不可能だ。これは次の理由で起きた可能性が高い──ある種族では、大きな舌骨を持つ個体がより多くの子孫を残せた。しかし別の種族では、大きな睾丸を持つ場合に、より大きな成功を収めることができた」と教授は説明した。

 好みに差が出る理由が何であれ、サルの雌と人間の女性はどちらも、パートナーを選ぶ際に声が太い方を好む傾向があると考えられている。

「大きな舌骨によって、雌が雄に感じる魅力を高めたり、自分が体が大きくて恐ろしい存在だと他の雄に思わせたりできる可能性がある。これは、雄が自分のハーレムを守り続けるための最善の方策なのかもしれない」とナップ教授は話している。(c)AFP