■夜中の太陽がワイン造りを救う

 ネリマルッカさんが北極圏のワイン造りに初めて挑戦したのは40年前。「1975年に妻がオランダからチューリップの球根を取り寄せたとき、広告の中にブドウの木があった。苗木を1本だけ注文したら、それは育て方が最も難しい品種の1つであるピノ・ノワールだった。だから勉強が必要だった」とネリマルッカさんは言う。

 数十年におよぶ試行錯誤の末、ネリマルッカさんは寒さからブドウを守る独自の方法を考案。従来のワイン生産地で一般的に行われている、ブドウの木をある程度の高さにまで育てる方法をやめ、冬を前に30センチ未満になるまで剪定(せんてい)するようにした。さらに湿気と寒さへの対策として熱を蓄える石をブドウの木の下に敷き詰め、冬に向けてブドウの木の一部を白いビニールのシートで覆った。

 夏には夜中の太陽に救われた。スンドムが位置する緯度では1日に最大20時間も日光が降り注ぐ。ネリマルッカさんの計算によると、3月から9月までの期間の日照時間は、イタリア南部のシチリア(Sicilia)島パレルモ(Palermo)付近のブドウ園より平均で30日も長いと言う。

 しかし今年の夏、母なる自然はネリマルッカさんに別の試練を与えた。長雨だ。欧州南部の広い範囲は猛烈な暑さに見舞われたが、フィンランドでは6月から7月にかけて毎日のように雨が降り、気温もこの時期としては過去50年で最低を記録した。

 だが、夏の終わりにしては例年にない暖かさが味方してくれたら、ネリマルッカさんは、例年より数週間遅いが、10月初めにはブドウを収穫しているだろう。

 それから大きなガラス容器の中で発酵させる。オーク材のたるを使う従来の方法は難し過ぎるため、諦めたのだという。

 ネリマルッカさんが40年前にワイン造りに初めて挑戦したとき、多くのフィンランド人にとってワインは外国の風変わりな飲み物だった。同国ではビールやウオツカの方が一般的であり、アルコールの小売りに関しては今も政府が専売している。

 ビールの消費量はやや減少したが、今でもフィンランドで消費されるアルコールの50%近くをビールが占めている。一方、ワインの市場シェアは1995年の11%から2014年には19%に拡大した。(c)AFP/Anne KAURANEN