■収容施設での現実

 ウィーンに到着したアハマドさんとアリアさんには、迫害を受けているような感覚はもうなかった。それまでは、ずっと急ぎ足で、どこへ行くべきかをゆっくり考える余裕などなかったが、ここでは今後の計画を練ることができた。

 2人はだいぶ迷った末、アハマドさんの姉妹が住んでいるドイツのケルン(Cologne)へ向かうことに決めた。そのままケルンにとどまるか、それとも2人の家族がいるオランダへ行くかは、後で決めることにした。

 ところが、ドイツ南部ミュンヘン(Munich)で別の列車に乗り換えようとしたところ、アハマドさんとアリアさんはドイツの警察に拘束され、旅はほろ苦い結末を迎えた。歓迎してくれる人たちは見当たらず、辺りは静けさに包まれていた。3人は手続きのために仮設の施設へと連れて行かれた後、粗末な一時収容施設に入れられた。

 収容施設からAFPの電話取材に応じたアハマドさんは、初めて落ち込んだ様子をみせた。アハマドさんによると、アリアさんが施設の環境を改善してほしいと交渉を試みたところ「ここはホテルではない」と施設関係者に一蹴されてしまったのだという。

 ドイツには現在、大量の難民や移民が流入している。そのため、アハマドさんたちが「家」と呼べる場所にたどり着けるまでには、さらに長い時間がかかる可能性も否めない。アハマドさんは「ようやく落ち着くことができると思っていたけれど、まだしばらくかかりそうだ。だけど、少なくとも、何とかここまで来ることはできたよ」と話した。(c)AFP/Serene ASSIR