【9月11日 AFP】ハンガリーのセルビア国境付近で警察から逃げる移民らに足を引っ掛けて転ばせたり子どもを蹴ったりする様子を撮影され世界中のひんしゅくを買った女性カメラマンが11日、沈黙を破り「当時はパニック状態にあった」などと釈明した。

 この女性は本件により治安妨害容疑で刑事捜査対象となっているインターネット番組放送局N1TVのペトラ・ラースロー(Petra Laszlo)元社員(40)。ラースロー元社員はハンガリー右派系紙マジャールネムゼット(Magyar Nemzet)に送った手紙のなかで「いま映像を見たが、あれが自分だとはとても思えなかった。自分がしたことを心から悔いているし責任をとるつもりだ」と述べ、「あの時はパニック状態だった。わたしは無慈悲に子どもを蹴ったりするような人種差別主義のカメラマンではない」と訴えた。手紙はマジャールネムゼット紙のウェブサイトに掲載された。

 ラースロー元社員は10日、治安妨害の疑いで警察に身柄を拘束され、事情聴取されたのち釈放されている。

 マジャールネムゼットに送った手紙でラースロー元社員は「やっと今になって、この手紙を書けるまで正気を取り戻せた。自分がした行為と、それによるわたしへの仕打ちからショック状態にある」と訴え、当時の状況については「何百人もの移民たちが警察の規制線を突破する様子をカメラで撮影していたとき、移民の1人が突進してきて私はパニックになってしまった。大勢が突進してくるという恐怖から、わたしの頭のなかで何かがはじけた。カメラを構えていたので誰が向かってくるのか見えなかった。襲われるということしか頭になく、自分の身を守らなければと思った」と説明した。

 さらにラースロー元社員は「わたしも母親であり、とりわけ残念に思うのはこちらに走ってきたのが子どもだったことだ。あの時のわたしには、それが分からなかった。パニック状態にあるときに適切な決断をすることは難しい」と後悔の念も示した。

 そのうえでラースロー元社員は、政治的な「魔女狩り」や誹謗(ひぼう)中傷、殺害するという脅迫にさらされていると明かし、「わたしは一人の女性にすぎない。今ではパニック状態で誤った決断をしてしまった結果、幼い子どもを抱え失業した母親でもある」と訴えた。(c)AFP