【9月24日 AFP】タイの動物園サファリワールド(Safari World)で、グローブをはめてリングに上がったオランウータン2頭が紹介され、オランウータンのボクシングが始まった──。このようなショーは、タイ人のみならず外国人をも魅了してきたが、近年、動物保護の精神が芽生えつつあるタイの文化と、徐々にかみ合わなくなってきているのも事実であるようだ。

 バンコク(Bangkok)郊外にある広大なサファリワールドには、人間のしぐさをまねるオランウータンたちのショーを楽しみに毎朝、数百人の観光客が訪れる。

 ここでのショーでは、ビキニトップにミニスカート姿の雌のオランウータンがミュージシャン役のオランウータンを誘惑したり、騒々しい観客役のオランウータンがビールを飲みほし、ボクシングのまね事をするオランウータンに向かって空き缶を投げつけたりする。

 だが外国人の目には、タイでの動物の扱いが矛盾しているようにも映る。

 ベビーカーに乗せられて散歩に出かけるイヌや、野良犬や野良猫たちの楽園と化した寺院を見ることも珍しくない同国ではあるが、その一方で、イヌを食する地方もあれば闘鶏や闘牛の伝統も残る。

 それでもタイの人々にも変化の兆しが見え始めている。動物を戦わせる催しの業界でも、より動物に配慮したルールが導入されるなど、全体として変わりつつある。

 例えばフィリピンの闘鶏は鶏の足に小型ナイフを装着させて戦わせるが、最近のタイの闘鶏は、鶏の爪を布で覆い、相手を殺すことではなく「戦いのテクニック」で勝敗を決めている。同様に牛同士を戦わせるタイの闘牛では、スペインと異なり牛が死ぬことはほぼ皆無だ。

「動物同士の戦いにもルールが必要だ」と話すのは、タイ動物虐待防止協会(Thai Society for the Prevention of Cruelty to Animals)のチャイチャン・ラオハシリパニャ(Chaichan Laohasiripanya)事務局長。「動物の健康状態や試合の時間にも配慮すべきだ」と指摘する。