■「欧米の責任」という見方も

 シリアやイラクで活動するイスラム過激派組織「イスラム国(Islamic StateIS)」に攻撃の標的とされているサウジアラビアなどの国では、安全保障上の懸念も重視されている。さらに草の根の政治活動がほとんどない国々では難民の大量流入が安定を揺るがす可能性がある。

 米シンクタンク「ブルッキングス研究所(Brookings Institution)」の中東研究部門ブルッキングス・ドーハ・センター(Brookings Doha Center)の上級研究員、スルタン・バラカット(Sultan Barakat)氏は「湾岸諸国はシリアの政治に関与している。だから恐らく、自分たちの国にやって来るのがどんな人たちで入国した後にどんな活動をするだろうか、といったことを懸念しているのだろう」と言う。

 バラカット氏は、難民を支援すると同時に批判を鎮める方法として、すでに湾岸諸国に在住しているシリア人の家族の入国を認めることを挙げる。就業機会に引かれて湾岸諸国へやって来ている数百万人の外国人の中にはシリア人も数十万人いる。そういう形で湾岸諸国はシリアを後にした人たちを既に支援しているのだ、と主張する人たちもいる。

 あるシリア人は匿名で最近、交流サイトのフェイスブック(Facebook)に次のように書き込んだ。「サウジアラビアは難民こそ抱えていないが訪問ビザでやって来た100万人のシリア人を受け入れているし、それとは別にシリア系住民もいる。シリア系住民は健康保健の適用も学校教育も受けており、時に慈善団体から家賃が払われている場合もある」

 湾岸諸国の一部には、批判は自分たちにではなく欧米諸国の政府に向かうべきだという主張もある。アサド大統領と闘うシリア反体制派への十分な支援と武器供与を欧米諸国が行わなかったことが難民危機につながったという批判だ。カタールの元外交官ナセル・ハリファ(Nasser Al-Khalifa)氏は、マイクロブログのツイッター(Twitter)で「自らの近視眼的な政策の結果に直面している欧州と米国の当局者たちこそが、もっと多くのシリア難民を温かく迎え入れなければならない」と書き込んだ。(c)AFP