【8月26日 AFP】亡き妻への愛から、22年かけて山を掘り続けて道をつくったインド人男性の実話が映画化され、21日に公開された。

 インドの身分制度カーストの最下層出身の貧しい労働者、ダシュラス・マンジ(Dashrath Manjhi)さんは1959年に事故に遭った妻を、緊急医療が間に合わなかったために亡くした。最寄りの町に行くには、55キロも山を迂回しなければならなかったからだ。

 他の村人には同じ目に遭ってほしくないと考えたマンジさんは、妻の死後、途方もない取り組みを始めた。昼夜を問わず、のみとハンマーだけで、岩山を少しずつ掘り進めたのだ。インド東部ビハール(Bihar)州のギャウル(Gehlour)村から隣町まで直接経路を堀り、55キロの道のりを15キロに短縮させた。全長約110メートル、幅は9メートルを超える箇所もある道が完成したのは、1982年のことだった。

 この実話を映画化した『マンジ―山の男(原題、Manjhi - The Mountain Man)』で主役のマンジさんを演じるボリウッド・スター、ナワーズッディーン・シッディーキー(Nawazuddin Siddiqui)さんは「美しくて感動的な話だ。彼は不可能を可能にし、自分の行動で大勢の人を救った」とAFPに語った。

 マンジさん本人は、2007年に胆嚢(たんのう)がんにより73歳で死去。ビハール州では州葬が行われた。

 マンジさんが山を切り崩し始めたとき、地元の人は彼が正気を失ったと思ったという。しかし後に人々は考えを改めた。開通から30年が経った最近、マンジさんが堀った道はようやく舗装道路になったという。(c)AFP/Udita Jhunjhunwala