■「サンキュー」ボタンで感謝の気持ち

 小さな村で生まれ育ったというタイスバッハーさん。都市部でのアパート暮らしを始めから約1年半が経過したころ、まだ近所の人ときちんと話をしたことがないことにはたと気付いた。それがきっかけとなり、フラッグ・ニブナンの構想を思い付いたのだという。

 オンライン登録フォームに必要事項を記入すると、アドレス確認のためのコードが記された手書きのカードが自宅に届く。メンバー登録を済ませた後は、今度は情報を共有する相手──同じ建物の住人に限定するのか、それとも範囲を広げて不特定多数とするのか──を設定する。

 タイスバッハーさんによると、同サービスにおける禁止事項は「商業広告や政党に関連した政治的発言、友好的でないメッセージ」と至ってシンプルだ。

 利用者は、「助け合う」、「地元についての情報交換」、「サークル」など大きく分けられた4カテゴリーから自分に合ったものを選ぶことができる。中でも「助け合う」は、節約も期待できることから最も多く利用されているという。中を覗くと、「調理器具を貸して」、「食べきれないケーキを差し上げます」といったものから、「家具の移動」、「植物の水やり」などその内容は多岐にわたる。それぞれの投稿の下にある「サンキュー」ボタンを押せば感謝の気持ちを表すこともできる。

 映画製作者でシングルマザーのロマーナ・カレン・レイキンジャーさんは、寛大な隣人の好意により、キッチンの改装費を0円に抑えることができた。「大量のペンキをもらうまでは、キッチンの壁を黄色のストライプにする予定は無はなかった」としながらも、実際にやってみて、インスピレーションに任せて正解だったと語った。そのほかにも、カットを無料で提供する代わりに、スペイン語のレッスンを求める美容師などもいる。

 もちろん、見知らぬ人を部屋に通すことに抵抗を感じるメンバーもいる。年金生活者で、同サービスを通じてフランス語の会話サークルに入っているスザンネ・アイスラーさん(62)は「グループの集まりに参加するのはいいけれど、休暇中にペットの面倒をみてもらう場合などは、やはり信用がないと(だめ)」と心配気に話す。また治安のあまりよくないエリアに住む人も知らない人を家に招き入れることには消極的なようだ。

 同サービスの運営で収益を得るためには、「地元企業や行政が住民にアプローチする際にお金を払ってもらう」といったビジネスモデルを考えているというタイスバッハーさん。将来的には「地域のエコシステム全体をつなげたい」とその抱負を語った。(c)AFP/Nina LAMPARSKI