■ダメなら「またスワイプ」

 モラレスさんはティンダーをのぞくたびに最長20分を費やすという。その間、登録者の写真を次から次へと「スワイプ」(画面に指を触れたまま滑らせる動き)してデート相手の候補を探すのだ。「ニューヨークならば、いつも誰かはいる。若くて教育も受けていて面白い人たちがあふれてるから、その中の『誰でもいい』って思いはいつもある。またスワイプすればいいわ、って。人間がますます使い捨てになっているようにも感じる」

 世界で毎日2600万組の出会いを成立させているとするティンダーのアプリでは、ユーザーは魅力を感じた相手の写真を「右にスワイプ」する。そしてお互いに「右にスワイプ」しあったユーザー同士はメッセージ交換ができるようになる仕組みだ。同社広報は「ティンダーは人々の出会いに革命を起こした」と喧伝しており、「右にスワイプ、左にスワイプは今やカルチャー用語の一部だ」と述べた。

 若いニューヨーカーたちにとって、ティンダーは今や日常の一部となった…少なくとも「恋愛氷河期」をやり過ごす時の支えにはなっているようだ。

 デザイナーとして働く匿名希望の女性(24)は、友だちの輪が固く、仕事場の同僚も年上ばかりで、インターネットがパートナーに出会う唯一の場所だったという。「バーや街中、そして電車の中で、男性にナンパされるなんて気持ち悪い。そういう男性に対しては、何か悪い目に遭うんじゃないかっていう警戒心を、女の子のほとんどは持っている。ぞっとするわね。何日か話したことのある人でなければ、デートなんてしたことない」

 一方、インターネット上の「見かけ」はすぐにほころびが出る。女性はネットでのある出会いについて、「クールで普通かなって思った男性が『僕はバイセクシュアルで、売っている麻薬が見つかったらたぶん刑務所行きだ』ってメッセージを送ってきた。だから『あなたはあまり私の好みじゃない』って返信した」とそのときのやり取りを説明した。