【8月7日 AFP】米国で35年前に盗まれたバイオリンの名器ストラディバリウス(Stradivarius)が6日、本来の持ち主に返された。長期にわたるミステリーをハッピーエンドへと導いたのは、弦楽器専門家の鋭い「目」だった。持ち主はすでに死去しているため、楽器は遺産相続人に渡された。

 同バイオリンは1980年、米ボストン(Boston)近郊の音楽学校で教壇に立っていたバイオリン奏者のロマン・トーテンベルク(Roman Totenberg)氏の教務員室から何者かによって盗み出された。バイオリンは1734年製で、推定500万ドル(約6億円)の価値があるという。

 ポーランド出身のトーテンベルク氏は、名バイオリニストとして数々の主要な米オーケストラと共演したが、2012年に101歳で死去した。

 バイオリンは、米ニューヨーク(New York)で記者らを前に、遺産相続人であるトーテンベルク氏の娘らに渡された。連邦政府職員からバイオリンを受け取った相続人の一人で、米公共ラジオ局NPRの法律担当記者でもあるニーナ・トーテンベルク(Nina Totenberg)さんは、「唯一悲しいのは、父がこの場にいないということ」とコメントした。

 NPRの公式ブログに掲載されたニーナさんのコメントによると、同氏は6月、米連邦捜査局(FBI)の職員からの電話で、同バイオリンが見つかったと伝えられたという。

 バイオリンは、2011年に死去した音楽家フィリップ・ジョンソン(Philip Johnson)氏の妻が、自宅にあった鍵のかかったケースの中から発見した。見つかったバイオリンを専門家に見てもらい、35~36年前に盗まれたロマン・トーテンベルク氏のストラディバリウスであることが判明した。専門家は、楽器表面の木目が判断の決め手となったと話している。ロマン・トーテンベルク氏は当初から、ジョンソン氏を疑っていたというが、捜査が行われるまでには至らなかった。

 ニーナさんは、他の偉大なバイオリニストの手で再び観客を魅了することを希望するとしながら、このバイオリンを手放す意向であることを明らかにした。遺産相続人である姉妹3人で話し合った結果だという。(c)AFP/Brigitte DUSSEAU