■羊に合わせて決まる毎日

 パドマ・ラムさんが羊飼いを始めたのは、12歳のときだった。デリー郊外がすべて農場だった頃だ。歳月を経て、劇的な変遷を見てきた。辺りはものすごいペースで成長し、今、羊を放牧させている場所はすべて開発予定地だという。

 彼らにどうしてあちこちへと移動するのかと聞けば、いつも「羊のためだ」という答えが返ってきた。一定のパターンがあるわけではなく、羊たちにとって必要なことを基本に、その日その日の予定を立てているようだった。動く時になったら、誰か一人が夜明け前に起きて新しいキャンプ地の偵察に行く。良い場所が見つかれば戻ってきて、みんなを先導して移らせる。

「チャルポイ」と呼ばれる軽い縄製のベッドに寝具、調理具、食器など、生活用品はすべてロバの背に乗せられる。小さな子羊も布にくるまれ、2、3匹ずつロバの横に吊るされる。人間の赤ん坊でさえもだ。

 だが、何千キロも歩き続け、電気がなく水も手に入れにくい場所で、雨風にさらされながら野営していくこの生活は厳しい。彼らは多くの意味で幸せそうにみえるが、そこに選択の余地があるとは思えない。

 インドは無数の言語や文化がある巨大な国だ。自分の職業のおかげで、遊牧民たちと共に時間を過ごし、火を囲んで紅茶を飲んでいると、まったく違う世界に入ったように感じる。

 撮影に訪れる度にいつも最後の15分ほどは、みんなのリクエストに応えてポートレートを撮ることにした。個人的に見るためだけにと言って、ベールをかぶらない姿を写してほしいと頼んできた女性もいた。最終回の撮影の時は、子どもたちがみんなで私に駆け寄ってきた。そして私の新しい友人、マーラさんは、遊牧民の鮮やかなターバンを私も巻いて一緒に写真を撮るまで、帰してくれなかった。 (c)AFP/Money Sharma

この記事は、2015年4月9日に英語で配信された、AFP通信インド・ニューデリー支局のカメラマン、マネー・シャーマのコラムを翻訳したものです。マネー・シャーマの写真は画像共有サイト、インスタグラムでも発表されています。