■「観光客恐怖症」

 観光業への依存は、すでにこの街の一部の地域ではっきりと見てとれる。例えば、かつては地元住民が集っていたランブラス通り(La Rambla)。今では観光客がファストフード店や土産店に群がっている。1888年に曽祖母が開店したという、ランブラス通り最古の生花店を営むカロリーナ・パレスさんは「この街らしさが失われている」と嘆く。店の前のバルコニーに垂らされた大きな旗には「ランブラスへ戻ろう、バルセロナ人」と書かれている。

 ランブラス通りに近い歴史ある市場、ラ・ボケリア(La Boqueria)の店主たちは、観光客が地元住民の買い物の邪魔になっていると不満を漏らす。地元当局は今年初め、買い物のピーク時に団体旅行客が市場に入ることを禁止した。

 ボケリアで鮮魚店を営むシャビエル・アロンソさんは「歩く隙間さえないから、元々の客は来るのをやめてしまった」と話す。この5年間で売り上げは半減したという。

 海辺の地区では昨年、部屋を短期間借りて住む若者の観光客が爆発的に増え騒いだことなどから、観光に反対する草の根の抗議運動まで起きた。

 2008~13年までバルセロナの観光計画に携わったバルセロナ大学(University of Barcelona)地理学教授のフランセスク・ロペス・パロメケ(Francesc Lopez Palomeque)氏は「この観光ブームは25年位の間に急激に起きたために、街がうまく対処できていない。それが、この観光客恐怖症を引き起こしている」という。