名前で拉致される麻薬戦争の街、メキシコ
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■警察や行政に浸透する麻薬組織
武装グループは市長に会うことはなかったが、交渉の結果、市の警察署長を辞任に追い込んだ。前の署長シルベストレ・カレト・ゴンザレス(Silvestre Carreto González)氏も、昨年7月に辞任している。
前署長の親戚であるクリスピノ・カレト・ゴンザレス氏と息子のサミュエル君も、5月9日から14日の間に姿を消している。また行方不明者の中には、カレト・クエバスという名字の3兄弟、ミゲルさん(23)、フアンさん(20)、ビクトル君(15)も含まれている。彼らはチラパに牛を売りに来ていた。住民たちは、カレト兄弟が消息不明になったのは、前署長への復讐だと思っている。ここでは警察が犯罪組織とつるんでいることが多いためだ。
トラック運転手、アレハンドロ・ナバさんのもう一人の姉妹、エステルさんは、今回のチラパの騒動は6月7日の中間選挙の前に始まったと語る。覆面をした男たちが政党への支持を訴える横断幕をつるすために、家の隣に来たという。
議会、市長、知事の一斉選挙の前日、行方不明者たちの家族は、彼らがいう「麻薬選挙」に対する抗議活動を展開した。市長選では、5月1日に射殺された与党・制度的革命党(PRI)の候補者の代わりに出馬した同党のヘスス・パラ・ガルシア(Jesus Parra Garcia)氏が当選した。
「誰が勝っても関係ない。ロス・アルディジョスとロス・ロホスを逮捕しない限り、状況は同じだ」と家族会のディアス氏はいう。「この選挙は、市長がロス・アルディジョスか、ロス・ロホスかを決めただけだ」というディアス氏は、兄弟2人を昨年、ロス・アルディジョスに殺されている。
チラパは昨年9月に学生43人が行方不明になったアヨツィナパ(Ayotzinapa)に近く、あの学生たちが通っていた教員養成大学がある。当局によれば、学生たちはゲレロ州のイグアラ(Iguala)市で、市長の命令により警察に襲撃された。イグアラ市の当局は学生たちを、ロス・ロホスとやはり対立している麻薬ギャング「ゲレロス・ウニドス(Guerreros Unidos)」に引き渡した。ゲレロス・ウニドスには、43人の男子学生を殺害した容疑がかけられている。 (c)AFP/Leticia PINEDA