■結婚の強要、疑惑から投獄・暴力へ

 ナディアさんは3月7日にラッカに到着した。そこで他の女性数人と1つの家に軟禁された。「ここを出たかったら、誰かと結婚しなければならない。そうでないと一生ここで暮らすことになる」と言われ、両親に電話をかけることもネットを見ることも、すべて禁止された。

 2週間後に、自分を勧誘したフランス語が母語の男と結婚することに同意した。しかし、「結婚」を1日で破棄し、他のフランス人女性2人と一緒に住むことを許された。

 だが、仏情報機関とのつながりを示す名刺をナディアさんが持っていたことをルームメートらが発見した。ナディアさんはかつて、いとこの過激派との接点が疑われた際に情報機関の取り調べを受けたことがあった。「(ISの)警察を呼ばれ、私は投獄された」

 ISが管理する地下牢獄で、独房での監禁と暴力に耐えた後、ナディアさんは解放され、男性にトルコとの国境まで連れて行かれた。「『フランスに帰っていいが、誰にも何も言わず、すべて忘れろ』と言われた」という。

 どうしてそうなったのかは、はっきりしない。ISに参加して欧州に戻ってきた人は非常に少数だ。ナディアさんも、なぜISが国外脱出に積極的に協力したのか、説明しなかった。

 ナディアさんはトルコに入国した後の6月1日、フランス当局からの情報を得ていた警察に身柄を拘束された。