■ISの他に選択肢がない住民たち

 ISは、支配地域の住民に対し、アメとムチの手法を用いている。残虐な公開処刑で住民を恐怖に陥れる一方で、比較的安定した生活や、医療や教育などの公共サービスを提供している。

 ハッサン氏は「住民のISへの支持は流動的だが、総じて、支配地域内からの大きな圧力を受けることなく統治するのに必要なものは得ている」「支配地域の住民は今もISの報復を恐れつつも、その統治モデルに価値を見いだしている上、他に容認可能な選択肢がない」と指摘した。

 シリアとイラクのイスラム教スンニ派(Sunni)住民はかねて、支配勢力から排除されていると不満を感じており、選択肢の欠如が両国におけるISの成功の秘訣となっている。

 シリアでは、スンニ派の反体制派組織がシーア派(Shiite)の一派アラウィ(Alawite)派に属するバッシャール・アサド(Bashar al-Assad)大統領の打倒を目指す活動を率いている。イラクではスンニ派がしばしば、シーア派中心の政権は差別的だと非難する。こうした力関係は、軍事的手段だけでは「カリフ制国家問題」の解決には至らないことを意味している。

 リスター氏は、「シリアでアサド政権が続く限り、そして、イラク政府の体制改善が国民による評価の変化につながらない限り、ISは国民から暗黙の承認を得るチャンスを常に持ち続ける」と指摘。「究極的には、ISに対する唯一かつ真の解決策は、ISが悪化させ利用しようとしている社会的な分裂や政治的な失敗という根本的な問題を解消することだ」と語った。(c)AFP/Sara Hussein