【6月24日 AFP】第2次世界大戦中、旧日本軍によるビルマ(現ミャンマー)とタイを結ぶ泰緬鉄道の建設に携わった旧日本兵と、労働を強いられた元英兵捕虜が22日、英ロンドン(London)で対面し、和解の固い握手を交わした。

 木下幹夫(Mikio Kinoshita)さん(94)とハロルド・アチャリー(Harold Atcherley)さん(96)は、市内の社交クラブで対面。2人は静かにソファーに座り、過去の体験を共に振り返った。実際に顔を合わせるのは今回が初めてで、会話も通訳を介したものとなったが、それでもお互いに心を通じ合わせているのは端から見ても明らかだった。

 8月の戦後70年を迎えるのを期に、今回のような対面の機会を設けることで「死の鉄道」とも呼ばれる過酷な労働現場に携わった人々が互いに理解を深め、そして建設作業中に亡くなった犠牲者への追悼にしたいとの思いが2人にはある。

 当時、若くして陸軍の大尉を務めていたアチャリーさんは、「今夜は木下幹夫さんと私の和解を記念する日だ。私たちがあの作業に携わってから73年が経った」と語った。

 さらに、人格ではなく、その人が偶然に属している集団から、その人となりを判断することは誤りだと述べ、「戦争は軍人ではなく(時の)政府によって行われるものだということを忘れてはいけない」と強調した。

 泰緬鉄道は1942~43年、ビルマに進攻した旧日本軍への物資輸送を目的に建設されたもので、6万人を超える連合軍の戦争捕虜が過酷な労働を強いられた。ここで命を落とした人は戦争捕虜が1万3000人、労働に駆り出された現地の人では10万人に上ると言われている。

 英国放送協会(BBC)で昨年放送された「死の鉄道」を題材したドキュメンタリー作品「Moving Half the Mountain: Building the Death Railway」に出演している木下さんは、同作品を一人の視聴者として観た。そして、生還した戦争捕虜の人々に会いたいとの思いが強くなったのだという。そのような木下さんの思いをアチァリーさんが受け止め、今回の対面が実現した。この作品では、2人の他、元英兵捕虜と元日本兵の計10人が取材に応じている。

 木下さんは、会場となった社交クラブに集まった元英兵たちに対して「あなた方にとても強い絆を感じる」と語りかけた。当時、オーストラリア兵の捕虜と共に鉄道建に携わったという木下さん自身は、現場での暴力を経験しなかったというが、他の現場での「残酷な労働環境」について耳にするたびにとても心が痛むのだという。

 そして、自分の下で建設作業に従事したほぼすべての戦争捕虜に感謝の言葉をかけたことを明らかにし、「彼らにもう一度会いたい」と述べた。

 木下さんは、ミャンマーでの戦没者慰霊式典に過去39年間で26回参列しているという。戦争については、戦勝国の人間であれ、敗戦国の人間であれ、巻き込まれた人々はすべて犠牲者だと話し、「このような悲しみが繰り返されないことを切に願う」と語った。(c)AFP/Robin MILLARD