【6月22日 AFP】フランス人にはワインがあり、英国人には紅茶がある。そしてスウェーデン人には、甘いスイーツと一緒にコーヒーを飲む時間「フィーカ」がある。

 スウェーデンはフィンランドに次ぐコーヒー消費大国だ。スウェーデン人口1000万人弱で、世界のコーヒー消費量の1%を占める。コーヒーは朝食と毎食後に出るが、フィーカは朝食と昼食の間、昼食と夕食の間に楽しむコーヒーブレークのこと。仕事中でも家にいても、街で買い物中でも山でハイキング中でも、すべての人の日課にほとんど聖域といえるほど組み込まれている。

 スウェーデン人にとってフィーカは、オフィスの冷水器の周りにたむろすることや、フランス人がカフェで友人とエスプレッソを飲むこととは比べ物にならない。スウェーデンでは、人々がフィーカのためにすべてを止める。少なくとも1日1回。2回のときもある。

 4月に米国で出版された『フィーカ スウェーデン式コーヒーブレイクの醍醐味(Fika: The Art of the Swedish Coffee Break)』という本には「フィーカのない生活なんて考えられない」と書かれている。著者はスウェーデン人のアンナ・ブローネス(Anna Brones)氏とヨハンナ・シンドバル(Johanna Kindvall)氏。「フィーカは休むためのすべでもある」とブローネス氏はAFPに語る。単にコーヒーを飲んでケーキをつまむこと以上に、ペースを落とし、日々の計画や繰り返しから離れて休むことなのだ。

 スウェーデンでコーヒーが飲まれ始めたのは1685年。1800年代には広く飲まれるようになった。このコーヒータイムが毎日の習慣として定着したのがいつかは分かっていないが、「フィーカ」という言葉が使われ出したのは、1913年だ。スウェーデン語の「カフィー(kaffe)」の「カ」と「フィー」を逆さにしたのだといわれている。

■フィーカでミーティング要らず

 フィーカはまた職場でも自然な光景だ。同僚とマグカップ片手におしゃべりするために仕事を中断しても、さぼっているとは思われない。「仕事中に休憩をとっても能率が下がらないことは研究で示されている。実際の効果はその反対だ」とリンショーピング大学(Linkoping University)のビベカ・アデルスワル(Viveka Adelsward)名誉教授はいう。「こうしただんらんから仕事の能率は上がる」

 首都ストックホルム(Stockholm)にあるスウェーデン・ハンドボール協会では1日2回、朝の9時半と午後の2時半に職員がフィーカのために集まり、コーヒーとペストリーを楽しむ。クリステル・テリン(Christer Thelin)会長は「今、お互いにやっていることを話す機会になる。アイデアが形になるし、多くのミーティングをしなくてすむ」と話す。

 職員のラッセ・チェーンベリ(Lasse Tjernberg)さんはこういう。「法律で1時間に5分の休憩が定められている。ここではフィーカのために、それらを合わせて15分の休憩にしているんだ。カフェインへの欲求を満たしながら何でも話し合うよ。仕事の話についてが多いけど、時事問題とか、時にはプライベートな話をすることもある」

■スウェーデン風スイーツと一緒に

 そしてフィーカは今、スウェーデン以外の国でも人気が広まってきている。その証拠に最近、ロンドン(London)、ニューヨーク(New York)、トロント(Toronto)といった世界の大都市や、オーストラリア、シンガポールで、フィーカを提供するカフェが次々と生まれている。

 スウェーデン文化交流協会(Swedish Institute)では、スイーツと一緒にフィーカの世界的普及に努めている。同協会のセルヒオ・ギマラエス氏(Sergio Guimaraes)は「スウェーデンの食に世界の関心が集まっている。中でも、スイーツの存在はスウェーデンで特別だ。『ワッフルの日』とか『シナモンロールの日』というように一つのケーキやペストリーのための日がある国はあまりないでしょう」という。

 フィーカの本の著者ブローネス氏は「今、スウェーデンはとてもトレンディ。フィーカもまたスウェーデンをいっそう素晴らしくしている伝統だ」と語った。(c)AFP/Camille BAS-WOHLERT