【6月8日 AFP】パリ(Paris)の名所エッフェル塔(Eiffel Tower)を臨む建物の屋上では、まるでイチゴやトマト畑を飛び回るハチのように、コック帽をかぶったシェフたちが行ったり来たりと忙しい──。騒がしいパリ中心部では「地産地消」のスローガンを掲げて、シェフたちがレストランの屋上に菜園を作っているためだ。

 ホテル「プルマン・パリ・トゥール・エッフェル(Pullman Paris Tour Eiffel)」のレストラン「Frame」のシェフ、オジェ・ポティエ(Ogier Pottiez)さん(30)が、屋上の菜園でバスケットに詰めていたのは、イチゴやミックスサラダ用のリーフ、チャイブの花、そしてニンニクを少々。

 ポティエさんは、「私たちのサラダは、その日に採れたものによって毎日変わる。遠地から運んでくる必要はなく、新鮮で香りが強いうちに皿の上に盛られる」と説明する。

 人口密度が高いパリの中心部に屋上菜園を作る──これこそエコ意識の模範のようなものではないだろうか。日曜のブランチに使われる卵は、キッチンの残渣をエサに育ったニワトリが産んだもので、パンケーキ用のはちみつは、ルーフガーデンの果物や野菜に授粉させるために設置してある5つのハチ箱から採取したものだ。

 このホテルの屋上菜園は、エンジニアによってデザインされた。農家に引けをとらないほど質の良い有機野菜を栽培する秘訣は、フランス国立農学研究所(Institut National de la Recherche AgronomiqueINRA)と共に研究した成果だという。

 そして、そのカギを握るのは、都会の有機的なごみから作った栄養豊富な底土だ。ここでの「ごみ」とは、コーヒー豆や草、おがくずなどで、土も普通のものよりも軽くなるという。これに真菌、ミミズ、そして堆肥をたっぷりと加える。

 パリの屋上菜園はオーガニック志向が強い。例えば、トマトの苗のアブラムシよけには、バジルとカーネーションなどのコンパニオンプランツが植えられている。また虫よけにはブラックソープを使い、元気のない植物にはイラクサの肥料を与える。作物は季節ごとに輪作されるので、土壌が疲れることはない。

 だが、このようなビジネスモデルで採算が取れるようになるまでには、やるべきことがたくさんある。そこで今注目されているのが、3月にフェランディ料理学校の屋上にオープンした最も新しい菜園だ。

 同学校に通う見習いシェフのパブロ・ジェイコブ(Pablo Jacob)さん(25)は、「大切なのは、屋上菜園は高級フランス料理のためだけに用意されているのではないということ。私たちはそこから採れるものでやっていけることを証明したい」と述べる。

 そう話すジェイコブさんが見せてくれたのは、オイスターリーフと呼ばれる珍しい植物だ。カキの濃い味がする葉は、付加価値が大きく、卸売市場でも高額で取引されている。「付加価値の大きい植物を選ばないとだめ。たとえ時間がかかっても」とセージ、レモンバーム、クルマバソウなどが植えられたプランターを前に語った。

「パリでも未来のシェフたちにとっては大注目の話題」と地産地消について熱く語るジェイコブさん。「ただのトレンドではなく、ここに根づいていくでしょう」と期待を込めてコメントした。(c)AFP/Isabel MALSANG