【7月1日 AFP】サカイタカシさん(仮名)は41歳の健康な男性だ。良い仕事に就き、笑顔がチャーミングで、恋愛対象は女性だ。だが彼はセックスをしたことがない。日本で増加している、童貞のままの中年男性の一人だ。

 サカイさんは一人の女性とどんな種類の関係も持ったことがなく、どうやって女性と出会うのかも分からないと語る。「彼女がいないし、できないし」「やる気がないといっても全くないわけじゃなくて、女性に対してはいいなと思うし。ただ他の人と同じように、それが結婚して子どもを生んでというコースに乗っかっていかないんだと」

 サカイさんの話を聞いて、ハリウッドのコメディー映画『40歳の童貞男(The 40-Year-Old Virgin)』の主人公を思い浮かべるかもしれない。だが、スティーブ・カレル(Steve Carell)が演じたような社会不適合者では決してない。サカイさんは日本社会に数多くいる男性の一人なのだ。

 国立社会保障・人口問題研究所(National Institute of Population and Social Security Research)が2010年に行った調査によれば、30代で独身の日本人男性の約25%が童貞だという。1992年に実施された同様の調査結果から約3ポイントの上昇だ。バブルが崩壊し、日本経済が長い低迷期に陥った時期と重なっている。

 全国地域結婚支援センター代表の板本洋子(Yoko Itamoto)氏は、安定した常勤職を見つけるのに苦労する日本の男性が増えており、彼らは経済的去勢を強いられているという。「自分の経済力に自信がもてなくなった。それを乗り越えて女性にアプローチする自信がまずなくなってしまう。日本のこの20年間の中で、やっぱり男性はかなり厳しい状況の中、競争社会の中で、逃げられないでいるんじゃないか」

 女性と精神的・肉体的な関係を築けないことによる痛みを、49歳の建築家(匿名希望)の男性はよく知っている。彼は人生の中で2回、女性に対してロマンチックかつ性的な感情を抱いたことがある。最初は20代半ばのとき、次はそれから20年後だった。しかし、2回とも振られた。「ものすごい精神的ストレス」だったと彼はいう。「自己の存在意義の否定というふうに非常に重たく」受け止めた。2回とも体重が激減したが、今は一生涯、独身で童貞のままではないかと不安になっている。