損傷した生体組織を再生する実験薬、マウスで効果 米研究
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【6月12日 AFP】実験薬を用いた治療で、マウスの損傷した肝臓、結腸、骨髄の組織を再生させることに成功したとの研究結果を、米国の研究チームが11日、発表した。再生医療に新たな扉を開く成果だという。
研究チームによると、この治療法が人間でも有効に働くことが判明すれば、結腸疾患や肝疾患、もしくは一部のがんなどの重病を抱える患者の命を救えるかもしれないという。
だが専門家らは、これはごく初期段階の研究であり、人間での試験を実施できるようになるまでにはさらに多くの研究を重ねる必要があると注意を促している。
米ケース・ウエスタン・リザーブ大学(Case Western Reserve University)と米テキサス大学サウスウエスタン医学センター(University of Texas Southwestern Medical Center)の研究者らが主導した研究の論文は、米科学誌サイエンス(Science)に掲載された。
論文の共同執筆者で、ケース・ウエスタン・リザーブ大医学部のサンフォード・マーコウィッツ(Sanford Markowitz)教授(がん遺伝学)は「われわれは非常に興奮している」と話し、「われわれが開発した薬剤は、組織幹細胞に対してビタミンのように機能し、組織をより速やかに修復する幹細胞の能力を刺激する」と同教授は続けた。
さらに「この薬は、複数の組織の損傷を治す。このことは、数多くの病気の治療に応用できる可能性があることをわれわれに示唆している」と述べている。
この薬は、現在のところ「SW033291」としてのみ知られている。
SW033291は、全ての人間にみられる遺伝子産物「15-水酸化プロスタグランディン脱水素酵素(15-PGDH)」の活性を阻害することができる。
この作用により、生理活性物質「プロプロスタグランジンE2(PGE2)」がより多く存在する状態を形成できる。PGE2は、さまざまな種類の組織幹細胞の成長を促し、治癒を促進する。