■あふれかえる観光客

 マカオの路線変更は必要不可欠という点には専門家も同意する。だが、その実現には複数の大きな壁が立ちはだかる。

 マカオは、人口63万6000人に対し、観光客数が3150万人(14年時点)にも上る。うち3分の2が中国本土からの観光客だ。「税金を使ったインフラ整備は遅れている」と、地元の英字経済誌「マカオビジネス(Macau Business)」 の発行人、パウロ・アゼベード(Paulo Azevedo)氏は指摘する。「大衆向け市場で(VIP市場を)補てんするのは可能だ。ただし、観光客の増加に対応する準備が街に整っていなければ、大衆向け市場の成長は望めない」

 マカオ政府が中国本土からの観光客数を制限し、現状の2100万人程度に抑える政策を打ち出したことも、新リゾート開発の足かせとなっている。地元住民は、大量の観光客によって既に市民生活が圧迫されていると不満を漏らす。「日用品も買えないし、バスにもタクシーにも乗れない」

 中国本土からの観光客のマカオへの関心が薄れてきていることも問題となっている。マカオには世界文化遺産に登録された「歴史市街地区」などの観光資源もあるが、「本土の人々は香港やマカオから遠ざかり、新たな体験を求めている。反腐敗運動もこの傾向を増幅させている」と、証券大手CLSAの報告書は述べている。

 飲食代や宿泊費の高さもマイナス要因だ。

 一方で、マカオの変革を新たなスタートと前向きにとらえる動きもある。中国・深セン(Shenzhen)から来た学生(22)は「カジノだと、子どもたちを連れてきて遊ぶ場所としてはふさわしくないけれど、家族向けの施設も併設されるなら、子どもや年配者と一緒にくつろげる。それは、とてもいいことだと思う」と話した。(c)AFP/Laura MANNERING, Aaron TAM